【グルメ小説】浅草ヨシカミで10年ぶりに旧友と呑む

【グルメ小説】浅草ヨシカミで10年ぶりに旧友と呑む

 

旧友との再会

旧友との再会は、私の地元で毎年8月2日、3日に開催される新潟県長岡市の長岡花火大会以来だが、昔の思い出を語りつつ酒を酌み交わすのはおよそ10年ぶりだった。

当時は日韓サッカーワールドカップの最中で、2人で渋谷のスポーツバーに駆け込み、入店口でドリンクチケット(1,000円)を購入して日本の勇姿を観戦していた。

試合は日本対ロシア。某テレビ局のサッカー中継史上歴代最高視聴率となる66.1%を叩き出した試合である。必死に頑張っている日本代表が映し出されているモニターに全員が釘付けとなり、狭い店内で知らない人達と肩を並べて応援した。

実際私は他人とコミュニケーションを取るのは苦手だが、こういう時は別人格が顔を覗かせる。不思議なことに、2秒で他人と友達になれるものだ。

 

 

湧き上がる大江戸線

試合の結果は駒野がPKを外して負ける…ではなく、稲本が1点を決めて勝利するという内容だった。

店内も店外も大いに盛り上がり、私達はにわかサッカーファンのテンプレの様な流れで六本木に進撃した。しかし、本物のにわかサッカーファンの熱狂ぶりに嫌気を差してそそくさと大江戸線に飛び乗り、当時住んでいた東中野に向かった。

六本木から大江戸線の深い深い地下に潜る途中、私達の様に地下に向う連中は皆無で、地下にテロ組織でもいたかの如く六本木の地上に向う人々で溢れていた。

途中、長いエスカレーターで下って行く私達は上ってくる人達全員とハイタッチをして日本の勝利を分かち合った。今思えば、知らない人達とこんなにフレンドリーにハイタッチをすることなど、今後100年無いのではなかろうか。

ようやく乗った大江戸線も、殆どの人が六本木で下車するため割りかし空いていたが、皆んな一様に日本代表のユニフォームを着用していた。エスカレーターのハイタッチ同様、車内でも「ニッポン!ニッポン!」のコールで湧き上がっていた。

私も相当酔っ払っていたのか「北方領土!」と掛け声を掛けたが、なんと車内の全員が応じてくれた。なんて不謹慎な人達なのだ。

 

 

ヨシカミとビーフシチュー

 

そんな思い出話に花を咲かせながらビーフシチュー(2,450円)を堪能。濃厚で真っ黒なソースは、柔らかく煮込まれた牛肉によく絡んで絶品だ。添えられているインゲン、ニンジン、フライドポテトは別々に調理されて存在感を放っている。

ヨシカミの狭いカウンターで肩を並べて調理場の職人さんを見ながら食事する姿は、どことなくあの日韓サッカーワールドカップの日本戦を見ながら酒を呑んだ其れと少しだけダブった。

 

 

 

 

 

 

 

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